形成外科と健康保険
簡単に言いますと、病気や外傷(ケガ)による障害を治療する場合には健康保険が適応されますが、美容上の理由で手術を受ける場合には健康保険は効きません。
昭和50年に形成外科が一般標榜科(形成外科の看板を出して良いと言うこと)として認められ、続いて昭和53年に美容外科が認められるようになりました。その後日本形成外科学会の絶え間ない努力により形成外科の治療対象や方法が少しずつ正当に評価され、それに伴って保険適応も拡大されつつあります。
健康保険では疾患や治療方法などにより細かく分類・点数化され、それに基づいて治療費の請求がされます。
逆にその点数表にない項目はすべて自費扱いになってしまいます。
すなわち形成外科が扱うすべての治療対象や方法が、健康保険の適応に認められている訳ではありません。
たとえば生まれつきの病気や変形の治療、外傷や熱傷(ヤケド)の治療、ガン切除後の再建手術などは健康保険の対象になりますが、二重まぶたの手術・シワとり術・豊胸術(胸を大きくする)・脱毛術などのいわゆる美容外科の手術や一部のレーザー治療は健康保険が効きませんので自費診療になります。
※レーザー治療に保険適応が認められている疾患は、単純性血管腫、苺状血管腫、毛細血管拡張症、太田母斑、異所性蒙古斑、扁平母斑、外傷性色素沈着(外傷性刺青)などです。加齢性色素沈着(いわゆるシミ)や入れ墨は保険適応外です。保険適応がある場合でも回数などに制限がある場合があります。
交通事故や喧嘩(ケンカ)などの第三者行為によるケガ、業務上や通勤災害のケガ(労災事故)も健康保険が適応されません。交通事故や喧嘩(ケンカ)などの第三者行為の治療費は、本来加害者が負担するのが原則です。第三者行為の治療費に健康保険を使って治療を受ける場合、加害者が支払うべき治療費を健康保険が立て替えて支払うこととなりますので、健康保険組合に「第三者行為による傷病届」を提出して下さい。
業務上や通勤災害のケガは、労災保険で補償されます。業務上や通勤災害のケガを労災病院や労災指定医療機関などで治療を受ける場合は、「療養の給付請求書」の提出が必要ですので、会社の労災担当者に確認して下さい。
一方健康保険制度を全然利用せず、自費診療のみの施設(病院・医院・クリニック)もあります。
自費診療の料金は各施設で自由に決めることができますので、各々の施設で異なります。自費診療は医師と患者の一種の取引ですので、美容外科の手術を受けられるのであれば複数の施設に相談に行かれて、治療法・料金・保証制度などを比較して慎重に選択するのが理想的です。
なお健康保険以外に育成医療制度や更正医療制度など治療費を公的に減免できる制度もありますので、最寄りの保健所などにご相談ください。なお、育成医療に関しては次項の説明をご参照ください。