一般社団法人 日本形成外科学会

漏斗胸

1. 漏斗胸とは

写真1
写真1
図1
図1

漏斗胸とはみぞおち付近を中心に胸部が陥凹する(図1)先天異常であり、肋軟骨が長いことに原因があると言われています。見過ごされるほど軽度の変形から、胸壁が背骨に付くぐらい高度なものまで、陥凹の程度は様々です。また、左右対称な場合と右側に陥凹が強い非対称性の場合があります。

変形の割には症状に乏しく、小児期には無症状で経過する場合がほとんどです。しかし、高度な変形になると圧迫による心肺機能異常などを合併することがあります。また、成人例では易疲労性や運動時呼吸困難などを訴える場合もあります。

機能上問題がない場合でも変形に起因する精神発育への影響はことのほか大きく、内向的で活動性の乏しい性格形成に至ることがあり、手術的加療が望まれます。

手術は10才ぐらいまでに行った方が良好な結果が得られます。それは陥凹部分の肋軟骨や胸骨自体が柔らかいため容易に曲がり、手術後に肋軟骨自体の矯正力が期待できるからです。

2. 漏斗胸の治療法

漏斗胸治療法図
漏斗胸治療法図

左右の胸に3cm程度の切開(場合によりみぞおち部分の小切開を加えます)から弯曲した金属のプレートを心臓・肺と胸骨・肋軟骨の間に挿入し、持ち上げます。成長期の柔らかい肋軟骨や胸骨が形態を整え矯正位に変化することに着目した方法です。基本的には2年以上たってからプレートを抜去します。
肺や心臓に接してプレートを挿入するわけですから細心の注意が必要で、形成外科の中でも限られた施設で行われます。

肋軟骨の硬くなった成人では肋軟骨の切開なども合わせて行う場合があります。詳しい手術方法については担当医に確認してください。

3. 漏斗胸の治療により期待される効果

子供で陥凹部が正中にある場合には左右対称の胸壁が再建できます。また、陥凹部の圧迫により左に偏位した心臓の位置も矯正される場合があります。しかし、右側の陥没の程度が強い非対称性の変形では、左右の完全な対称性が得られない場合があります。また、成人例では変形の程度により軽度の凹凸が残存する場合があります。

監修

監修者代表

一般社団法人 日本形成外科学会 
渉外・広報委員会 委員長:小山明彦

渉外・広報委員会(他監修者)

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