一般社団法人 日本形成外科学会

性同一性障害(性別違和)

1. 性同一性障害とは

性同一性障害とはいわゆる性転換症のことで、「からだの性別」(sex)と、本人が自覚する「心の性別」(gender)が一致しないために苦しむ状態です。その原因はいまだ完全には解明されていませんが、生物学的な問題、すなわち胎児期に身体または脳のいずれかの性分化に異常が生じた結果と考えられています。

2. 性同一性障害の治療法

「からだの性別」を「心の性別」に合わせる性別適合手術は、性同一性障害の治療の最終段階であり、いきなり手術をするわけではありません。治療は日本精神神経学会が作成したガイドラインに沿って、段階的に進められます。治療の条件は18歳以上であることであり、また20歳未満は親権者の同意が必要になります。認定された施設での一部の手術は健康保険も適応されています。

(1)精神科診療

  • 生活歴や本人の性に対する認識、からだへの違和感などの問診
  • 2人の精神科医と婦人科医または泌尿器科医が診察し、見解が一致すれば診断が確定
  • どちらの性別で暮らすほうがよいのか検討

(2)身体的治療

  • ホルモン療法
  • 手術
  • 1年間以上、本人が希望する性別で生活が可能であり、「からだを変えたい」という気持ちが一貫していれば性別適合手術へ進みます。

(3)性別適合手術:男性から女性へ

陰茎・睾丸摘精巣切除術
男性機能を失います。外陰部の形態が女性に近づくとされます。
膣形成術(陰茎・精巣切除術後)
皮弁法:陰茎・精巣切除、周囲の余剰皮膚を利用します。
S状結腸法:膣を結腸で再建します。
豊胸術
シリコンバッグを挿入して、女性乳房を作ります。
その他
脱毛、顔の形成術(前額、鼻、下顎の骨切り手術など)、喉仏の切除、声を高くするための声帯の手術などがあります。女性ホルモン療法により、体毛は薄くなり、乳房も張ってくるため、体つきも女性らしくなりますが、骨格は変わりません。精神的にも不安定になる場合があります。

(4)性別適合手術:女性から男性へ

乳房切除術
乳房の大きさや下垂の程度によって術式がかわります。乳頭縮小も行います。
子宮卵巣摘出・膣閉鎖術
女性機能を失います。乳房切除と同時に婦人科チームにより行われることがあります。
尿道延長術
陰茎形成を前提として尿道を長くします。
陰茎形成術
施設により異なりますが、腕やふとももなどから皮弁を採取し、筒状にして陰茎を形成します。尿道も作られるので、立ったまま放尿が可能となりますが、勃起機能までは困難です。再建方法によってはある程度の知覚が付くことがあります。
その他
男性ホルモン療法により月経は停止し、ひげ・体毛が生え、声は低くなり、筋肉質になりますので、低い身長を除いては外見上全く男性と見分けがつかないほどになります。

3. 性同一性障害の治療により期待される効果と問題点

性転換治療と言うと、とかく手術のみにその興味が向けられます。しかし性同一性障害を持つ方々のQOLの向上のために最も大切なのは、戸籍上の性別変更です。また最近は、日本に比べて治療費が安くて症例数が多い諸外国での手術が多くなっているようですが、その実態は不明です。言葉が通じないこと、帰国後にトラブルが起こった場合にもすぐに対応してもらえないなどの問題に関する情報は不十分といえます。
安心して手術を受けるには、国内の認定施設を受診することが一番大事です。

監修

監修者代表

一般社団法人 日本形成外科学会 
渉外・広報委員会 委員長:小山明彦

渉外・広報委員会(他監修者)

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