瘢痕(傷跡)
1. 瘢痕(傷跡)とは
擦り傷や切り傷などの外傷ややけど(熱傷)、またニキビや手術による傷が治ると、傷跡が残ることがあります。一般的に深い傷ほど目立つ傷跡となり、整容的に問題となります。浅い傷でも面積が広いとやはり目立つ傷跡になる場合があります。
傷跡と一言でいっても、それにはいくつかの種類があります。
2. 瘢痕(傷跡)の傷跡の種類
1)成熟瘢痕
傷は炎症とともに治っていきますので、最初は赤くて痛い傷が、時間が経つにつれ肌色?白色に近づいていくのが普通の経過で、このようにして残った傷跡を「成熟瘢痕」(図1A)といいます。
2)肥厚性瘢痕
傷ができてからしばらくの間、傷が赤くみみずばれのように盛り上がることがあります。これを「肥厚性瘢痕」(図1B)といいます。深い傷は肥厚性瘢痕となることが多いですし、傷が関節や首など、体が動くと引っ張られる場所にできると、ほとんどの傷が肥厚性瘢痕となります。胸やお腹の手術後の傷跡は、肥厚性瘢痕になりやすいことが知られています。肥厚性瘢痕は炎症がなかなか引かない傷跡、と考えるとよろしいかと思います。関節の傷はいつでも引っ張られますので、炎症がその都度おこり、なかなか炎症が引きません。完全に炎症が引くまで、1年から5年くらいかかることもあります。
3)ケロイド
傷跡には、肥厚性瘢痕よりも炎症が強いものがあり、それを「ケロイド」(図1C)といいます。ケロイドの発症には「ケロイド体質」が大きく(ケロイド・肥厚性瘢痕のページ参照)、遺伝することもあり、その原因などは様々です。このようなケロイドでも最近では、治療できるようになりました。ケロイドで悩まれている患者さんはお近くの形成外科に相談してみてください。
4)瘢痕拘縮
肥厚性瘢痕やケロイドを治療しないで、放っておいた場合、また効果の弱い治療を続けてしまった場合、徐々に線維がたまっていって硬くなり、関節などで引きつれを起こすことがあります。これを「瘢痕拘縮」(図1D)といいます。瘢痕拘縮を生じてしまうと、柔らかくなるまでに相当な時間がかかりますので、手術をすることも考えねばなりません。
3. 瘢痕(傷跡)の治療法
ケロイド・肥厚性瘢痕や瘢痕拘縮、また見た目だけが問題となる瘢痕では治療法が異なります。ケロイド・肥厚性瘢痕と、瘢痕拘縮の治療法については、別のページをご覧下さい。ここでは「成熟瘢痕」の治療法について記載します。
普通の皮膚とは質感が異なり、単に見た目が問題となる場合が多いものです。これらは見た目の問題であるため、健康保険を適用して治療できないものが多くなります(適用については担当医とご相談ください)。
また跡形無く傷跡が消えてしまうと言うことではありませんので、治療にあたっては担当医とよく御相談の上、その効果や限界についてご理解頂くことが必要です。
a. 外科的治療法
瘢痕を切除して縫合してしまう方法があります。けがによる細い傷跡などは、周囲をジグザグに切って縫うことで、傷にかかる力が分散して、目立たない傷にすることが可能です(図2)。W形成術やZ形成術という方法が使われます。
大きな傷跡の場合は、周囲の皮膚の下にエキスパンダーという風船を入れて、皮膚を膨らませていき切除しただけでは縫えない大きい傷を縫えるようする方法もあります。
術後は、肥厚性瘢痕になる傾向が強くなりますので、抜糸した後もシリコーンテープやジェルシートで固定したり、ステロイドのテープを用いることで炎症を消失させることが大切です。
b. レーザー
皮膚に細かい穴をあけて、皮膚の再生を促すレーザーが使用できる場合があります。
c. メイクアップセラピー
傷跡に特殊なメイクアップをすることができます。