一般社団法人 日本形成外科学会

診療科の特徴

Q. 形成外科はいつごろ設立されたのですか?

A. 第1回日本形成外科学会総会は1958年11月に開催され、その後1960年1月に東京大学病院に形成外科診療科が設立されました。現在、やっと半世紀を経過した若々しい外科学分野です。

A. 形成外科の歴史は古く、紀元前6~7世紀のインドで鼻削ぎの刑を受けた人に対する造鼻術(インド法)やルネッサンス時代のイタリアで、梅毒による鼻欠損に対する造鼻術(イタリア法)が報告されています。第一次世界大戦では近代兵器による顔面外傷、骨折、広範囲の組織欠損など、多くの戦傷者が発生し、形成外科手術が著しく発展し、形成外科plastic surgery として独立したと言われています。我が国では第1回日本形成外科学会総会が1958年11月に開催され、その後1960年1月に東京大学病院に形成外科診療科が設立されました。

Q. どのような疾患を対象にしていますか?

A. 形成外科医は、頭のてっぺんから手や足の先まで、身体の表面を中心に、至る所の病気やけがを治しています。傷や変形をきれいに治すことを主な目的とし、顔や手足など身体表面の、ケガや顔面骨折、やけど、あざ、腫瘍、先天異常、皮膚潰瘍、がんの切除・再建、乳房再建および美容医療などの疾患を対象にしています。治療する患者の年齢も新生児、小児から青少年、成人、高齢者まで全ての年代に及びます。

A. 形成外科は、目に見える身体表面の形態や機能の異常を修復することで、その人のQOL(quality of life:生活の質)を向上させることを目的としている診療科です。対象疾患は体表先天異常(頭蓋・顔面、体幹、手・足など)、外傷(切創、擦過創、熱傷、顔面骨骨折、切断肢・指など)、皮膚・軟部組織腫瘍(悪性腫瘍、良性腫瘍、母斑、血管腫など)、腫瘍切除後の再建(顔面・頭頸部、乳房、四肢など)、瘢痕・ケロイド、褥瘡・難治性潰瘍(手術後の創感染・創治癒遷延、足の潰瘍など)、美容医療など多岐にわたります。また、最近は眼瞼下垂症、顔面神経麻痺、リンパ浮腫などにおいても形成外科手術テクニックの有用性が認められ、症例数が急増しています。

Q. 形成外科医は足りないのでしょうか?余っているのでしょうか?

A. 2020年現在、日本形成外科学会の会員数は約5,300人です。対象とする疾患は年々増えており、これからも多くの形成外科医が必要となるでしょう。

Q. 手術以外の仕事は何ですか?

A. 外科医の仕事は、外来診療、手術業務、術後管理などたくさんあります。医学という学問に携わるものとして、患者に対する診療業務以外に、学会活動、論文執筆、研修医、医学生、医学スタッフの教育などが仕事として挙げられます。

A. 形成外科医の手によって発展を遂げたいわゆる手術以外の治療法も数多くあります(レーザー治療、血管奇形に対する硬化療法、しみ・しわに対する外用治療など)。また、皮膚・軟部組織腫瘍や顔面骨骨折、皮膚・軟部組織感染症のエキスパートとして、他科から診断を含むコンサルテーションを受ける機会が増加しています。

Q. 形成外科医になるためには手先が器用でないとだめですか。

A. お箸を使って食事ができる人なら誰でも大丈夫です。

A. 形成外科診療において手先が器用であることが有利に働くことはありますが、それでないとだめということは全くありません。

Q. どのような手術から経験を積み始めるのですか?

A. 小さい皮膚腫瘍の切除術や全層植皮の採皮部の閉創など、単純縫縮の手技から経験を積み始めることが多いです。その後に植皮術、局所皮弁術、筋皮弁術、顔面骨折、唇裂・口蓋裂手術、遊離皮弁術、切断指再接着、乳房再建、頭頸部再建など徐々に難易度の高い手術を経験することになります。

Q. 施設ごとに疾患の特色はありますか?

A. はい。例えばがんセンターのような施設では頭頸部や乳房の再建症例が、小児病院では唇裂・口蓋裂などの先天奇形症例が、救急センターのような施設では外傷や熱傷の症例が多いです。自分の興味の持てる分野がはっきりしているのなら、そのような症例の多い施設を希望して研修先を選ぶことも可能です。

Q. どのような基礎研究が盛んですか?

A. 形成外科の基礎研究として盛んなものは、皮膚・毛髪・脂肪・神経・骨・軟骨などの再生医療に関する研究、創傷治癒に関する研究、皮弁の血行動態や微小循環に関する研究、人工材料の開発に関する研究、手術のシミュレーションに関する研究など、多岐にわたります。日本形成外科学会では年1回、基礎研究に的を絞った基礎学術集会を開催しています。

A. 形成外科は、組織工学、再生医療、創傷治癒といった様々な最新の基礎研究と密接な関連をもっています。特に再生医療に興味がある方は、形成外科医になるとその研究内容を実際の臨床に応用する機会があり、たいへん楽しいと思います。実際には皮膚や骨、軟骨などの再生医療や、治りの悪い傷をいかに早く治癒させるか、といった研究を行っている人が多いです。iPS細胞やES細胞をはじめとする幹細胞を使った研究をしている人もたくさんいます。

Q. 形成外科はどのような雰囲気の診療科ですか?

A. 形成外科は良くも悪くも「若い」診療科です。診療指針やガイドラインが整備されていない対象疾患が比較的多くありますが、このことは日々新しい診療概念が開発されていることを意味しています。形成外科の学会では、毎回数多くの新しい治療法(手術法や再生医学的治療法など)が報告されており、自由闊達な討論が行われています。

Q. 休みはとれますか?

A. 勤務先の状況にもよりますが、他の診療科の医師と比べて休みがとりにくいということはありません。

Q. 形成外科の一番の醍醐味は何ですか?

A. 多くの外科学は、“病巣部を切り取ること”が主たる目的となりますが、形成外科学は“欠損した部位を再建する”ことを目指す creative surgery: 創造する外科学という点が大きな特徴です。しかも、再建部位が身体表面の見えるところにあり、その結果の善し悪しが、医師にも患者にもはっきりとすぐ分かるところが醍醐味でもあり、恐いところです。患者のQOL に大きな影響を及ぼす診療分野です。

A. 形成外科の対象分野である再建外科をとってみても、全く同じ欠損は二つとしてなく、その患者に適した再建法をいくつか考えて最適なもの選ぶ、いわゆるオーダーメイド的な治療が求められます。ひとつの目的に対していくつもの手段があるため、定型的な治療法が少ないことが特徴であり、診療する上での醍醐味です。

Q. 形成外科医は体力がないとやっていけないでしょうか?

A. 形成外科医の手術には、局所麻酔で10分以内に終ってしまうものから、朝から晩までかかるような長時間の手術があります。気力と体力はあるに超したことはありませんが、どんな形成外科医にも得手不得手がありますから、自分の得意な分野で無理なく力を発揮できるかと思います。

A. マイクロサージャリーによる組織移植手術や頭蓋・顔面多発外傷の手術など、長時間かかる手術もありますが、決して腕力を必要とはしません。体力があることは一つの長所になりますが、形成外科医としての長所となり得る能力は多岐にわたりますので、体力に自信がない人でも第一人者として活躍することは充分に可能です。

Q 訴訟が多いような印象がありますが、どうでしょうか?

A. 見た目に関する患者の要望やクレームはありますが、命に関わることや重大な後遺症を残すことが少ないので訴訟になることはほとんどありません。