一般社団法人 日本形成外科学会

腋臭症(わきが)

1. 腋臭症(わきが)とは・腋臭症(わきが)の概要

腋臭症(わきが)とは、わきの下が特異な悪臭を放つ場合を言い、「わきが」とも呼ばれています。欧米ではある程度生理現象として認識されていますが、東アジアではにおいや衣服の黄ばみなどに嫌悪感を抱く傾向があり、実際お悩みの方は潜在的に多いのではないかと思います。
皮膚にはエックリン腺とアポクリン腺の2種類の汗腺(汗を出す器官)がありますが、腋臭の原因となるのは主に後者で、アポクリン腺の分泌亢進に起因します。アポクリン腺はわきの下だけでなく、外耳道、まぶたの縁、鼻、乳輪、外陰部などの毛穴に分布し、その汗に含まれる脂質・タンパク質が皮膚表面の細菌の作用で分解され特有のにおいを生むとされています。アポクリン腺の発達には遺伝的素因、性ホルモン(思春期から発症)などが関与するほか、腋毛の量、精神的素因(ストレスや緊張など)、スポーツによる発汗もにおいの発生に関係しているようです。

2. 腋臭症(わきが)の治療法

下記に具体的な治療方法を示しますが、保険適応外の治療も含まれますので、詳細は担当医の先生にお聞きください。

(1)保存的治療

腋臭症(わきが)の治療はまず不規則な日常生活や喫煙習慣など生活習慣を見直すところから始まります。腋毛の処理や市販の制汗剤も一定の効果を出すことがあります。医療用のボツリヌス毒素の局所注射や塩化アルミニウム溶液の外用も有効とされています。レーザーなどによる脱毛法、イオン導入法(イオントフォレーシス)もある程度の効果が得られており、最近ではマイクロ波を利用してアポクリン腺を破壊する治療機器の有効性が報告されています。

(2)手術療法

手術治療のよい適応になるのはにおいが強い場合です。においの感じ方には個人差があるので、患者さんはとても悩んでいるにも関わらず、においの程度がごく軽い(ない)場合があります。このような時には手術はお勧めしません。またとにかく汗の量が多くてお困りの方は「多汗症」という診断で治療も異なります。胸部交感神経節ブロック(または切除)法を胸部外科や麻酔科に依頼することがあります。

手術はわきの下の皮膚切開からアポクリン腺の分布している層を剪刀(せんとう、外科手術用はさみ)で皮膚の裏側から切除する方法が最もよく行われています。最近は剪刀の代わりに切除用の特殊な器械(クアドラカット剪除吸引器、超音波メス、脂肪吸引器など)を用いる方法もあります。またわきの下の皮膚ごと切り取り縫い縮める切除法、それらを組み合わせた方法などもあり、切開する傷の位置や大きさは様々です。
方法による違いはありますが、9割以上の方は強いにおいは減少します。逆にいえば手術で完全ににおいを取り去るのは困難であり、個人差がありますがにおいの後戻りが起こります。これらはアポクリン腺の除去をわきの下の全範囲で完全に行うことが難しいためです。

手術後起こりうる合併症は、傷が治るまでの期間には皮膚の下に血の固まり(血腫)や膿をもってしまう、それらの結果としての皮膚壊死などがあります。その予防のためには傷の安静が重要ですから、術後はガーゼをわきの下に大量に硬く当てる固定法をよく行います。また腕を動かし過ぎないなどの生活上の制約が一定期間必要になります。
また、手術後数カ月の間は皮膚の引きつれ(拘縮)や色素沈着などが生じます。その後、次第に改善しますが、手術による瘢痕は永久に残ります。また副次的な作用として腋毛の減少も認めます。それらのことを考慮の上、手術を行うかを検討する必要があります。

3. 腋臭症(わきが)の治療により期待される効果

脇のにおいが改善することにより、日常生活の質が向上することが期待されます。