色素性母斑(ほくろ・母斑細胞母斑・黒子)
1. 色素性母斑とは・色素性母斑の概要
小さな色素性母斑は悪性化することはあまりありませんが、巨大色素性母斑は悪性化する可能性があるともいわれているため、適切な観察や治療が必要です。また一般に足の裏や手のひらのほくろも悪性化しやすいと言われますが、それほど頻度は高くありません。
ただホクロがいつのまにかできて次第に大きくなる、色の濃淡がある、形状が左右対称でない、境界が不明瞭、傷ができて治らない、などは悪性化の可能性があるため、早めに形成外科を受診してください。
2. 色素性母斑の治療
年齢、母斑の大きさ、手術方法によっては全身麻酔が必要となります。
直径数mmまでの小さなほくろは電気やレーザー(炭酸ガスレーザー、エルビウム・ヤグレーザーなど)でほくろ全体を焼き取る方法や、メスまたはパンチを使ってくり抜く方法が一般的です。悪性化の心配がある場合はくり抜いた組織を病理検査します。くり抜いたあとは通常は縫合せず、傷が自然に治るまで約2週間軟膏治療を行います。治った直後は赤みのある傷跡になりますが、徐々に色が薄れ数か月経てば目立ちにくくなります。
数mm以上の場合は紡錘形に切除して縫い合わせる方法が一般的です。さらに大きい場合は、2、3回に分けて少しずつ切り取って縫い寄せる方法もあります。縫い寄せるのが難しい場合、周囲の皮膚を移動(局所皮弁)して傷をふさぐこともあります。局所皮弁でふさぐことができない場合は、皮膚移植(植皮)しますが、移植した皮膚と周囲の皮膚とは少し色合いが異なるので手術後の整容性はやや劣ります。
巨大色素性母斑では何回かに分けて切除したり、レーザー治療を行ったりします。またシリコンでできた袋(ティッシュー・エキスパンダー)を母斑周囲の皮下にあらかじめ埋めて、エキスパンダーに少しずつ生理的食塩水を注入して上の皮膚を伸ばしてから、エキスパンダーを取り出し、母斑を切除後、伸びた皮膚を引き寄せて傷をふさいだりもします。最近では、ご本人の皮膚を採取して培養表皮を作成して移植することが保険適応となりました。
このように母斑の治療はその大きさにより様々な選択肢があります。一部の治療には保険医療の範囲で可能な治療ですが、保険適応外のものがあります。詳しくは形成外科担当医にご相談ください。
3. 色素性母斑の治療により期待される効果
病変が完全に切除できれば、悪性化の心配は少なくなります。しかしながら病変が取れれば、他の場所とわからないほど、きれいな皮膚になるわけではありません。瘢痕と呼ばれる傷跡が生じます。形成外科的な治療を行えば、瘢痕をできるだけ目立たなくさせることは可能です。また傷跡をより目立たなくさせることをご希望の場合には、保険適応外の治療となることもあります。詳しくは形成外科担当医にご相談ください。