人工物による乳房再建(インプラントによる乳房再建)
1.人工物による乳房再建とは
人工物による乳房再建とは、人工乳房(インプラント)による再建です。この方法は特定の人工乳房を用いる場合に健康保険が適用されます。ただし施設によって行えない場合がありますので確認が必要となります。 組織拡張器(エキスパンダー)を併用する場合と併用しない場合があります。 併用する場合にはシリコン製の風船(エキスパンダー)を胸の筋肉の下に留置し、徐々に皮膚皮下組織を乳房の形に膨らませて伸ばした後に、人工乳房に入れ替えます。
2.人工物による乳房再建の治療法
組織拡張器は、胸の筋肉の下に入れた後、1-3週間に1回の割合で4-6カ月くらいの期間に外来で生理食塩水を注入して拡張していきます。この手術は胸の手術のみで他の部位に傷がつかない、手術時間が短い、胸の皮膚を拡張するので皮膚性状の違いが無いなどの優れた利点があります。
組織拡張器と入れ替える人工乳房はシリコンインプラントが多く用いられています。とくに、コヒーシブ(固着性)シリコンインプラントは破れても中身が外に漏れ出さないように工夫されています。しかし、基本的には人工物ですからときに破損や変形の可能性もあります。その際は再度バッグを入れ替えることになります。
以上記述された治療は保険医療の範囲で可能な治療ですが、シリコンインプラントには保険適応外のものがあります。またより高い完成度をご希望の場合には、保険適応外の治療となることもあります。詳しくは形成外科担当医にご相談ください。
3.人工物による乳房再建により期待される効果
近年では、再建方法が進歩してより美しい乳房が再建できるようになってきました。その結果、乳房切除による喪失感や日常生活の不都合が解消されます。精神的苦痛から開放されることによるQOLの向上が期待できます。
2019年に日本で唯一、保健医療により使用が承認されていたシリコンインプラントにより乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)の発症が報告されました。それ以降、このシリコンインプラントは使用されておりません。BIA-ALCLの発症頻度は約 2200-3300 人に1人(0.030-0.045%)と低く、腫れやしこりなどの症状が無く、担当医の評価でも異常が無い場合には、予防的に同インプラントを摘出する必要はありません。
同インプラントが使用されている患者さんたちは治療を担当した形成外科医が責任をもって定期的な診察を継続いたします。最新の情報については日本乳房オンコプラステックサージャリー学会HPをご参照ください。