自家組織による乳房再建
1.自家組織による乳房再建とは
自家組織による乳房再建とは、患者さん自身の身体の皮下脂肪の豊富な部分を胸に血行を保ったまま移植する方法です。移植する脂肪組織の栄養血管を、切らずに届く範囲で移植する方法と、いったん切断して胸の移植部位で血管吻合を行って移植する方法があります。自家組織による再建でも、組織拡張器を併用する場合があります。自家組織の移植法としては、
- ① 腹部の皮下脂肪を利用する腹直筋皮弁術
- ② 背中やわき腹の皮下脂肪を利用する広背筋皮弁術
の2つが代表的な方法です。
2.自家組織による乳房再建の治療法
この手術法の利点は自分の組織で再建されるため、自然な柔らかさと温かさがあり、違和感がなく体型や体位に応じて変化してくれることです。しかし、他の部位から組織が移植されるため、胸と他の部位に傷あとが残ります。移植脂肪に筋肉を付けて移植する場合と筋肉を付けずに移植する場合があります。
1)腹直筋皮弁による乳房再建
適応となるのは
- ① 広く大きな組織欠損がある場合、
- ② もう一方の乳房が大きく、大きな乳房をつくる必要がある場合、
- ③ 整容的な配慮をする場合(下腹部の脂肪が多く切除を希望した場合)
です。適応に気をつけるのは将来妊娠出産の予定のある場合や腹部に手術の傷あとがある場合などです。
合併症としては、下腹部が若干膨らんだり、まれにヘルニア(脱腸)になることがあります。術後しばらくは下腹部を支持するために腹帯やガードルなどの装着をしていただきます。
2)広背筋皮弁による乳房再建
適応は
- ① 将来妊娠出産の予定のある場合、
- ② 比較的小さな乳房をつくる場合、
- ③ 腹部に手術の傷あとがあるため腹直筋皮弁の使用が難しい場合
などです。合併症としては、背部採取部に浸出液(汁)が溜まることがあります。
3.自家組織による乳房再建の治療により期待される結果
近年では、再建方法が進歩してより美しい乳房が再建できるようになってきました。その結果、乳房切除による喪失感や日常生活の不都合が解消されます。精神的苦痛から開放されることによるQOLの向上が期待できます。
以上記述された治療は保険医療の範囲で可能な治療ですが、より高い完成度をご希望の場合には、保険適応外の治療となることもあります。詳しくは形成外科担当医にご相談ください。