一般社団法人 日本形成外科学会

先天性眼瞼下垂

1. 先天性眼瞼下垂とは

先天性眼瞼下垂の図
先天性眼瞼下垂の図
片側性眼瞼下垂の図
片側性眼瞼下垂の図
眉毛を挙上し、顎が上がった図
眉毛を挙上し、
顎が上がった図

先天性眼瞼下垂とは上まぶたが十分に開けられず、まっすぐ前を見たときに上まぶたが黒目を被っている状態をいいます。生まれつき認められる場合を先天性眼瞼下垂といいます。原因としては生まれつき眼瞼挙筋(がんけんきょきん)というまぶたを挙げる筋肉の力が弱かったり、まぶたを挙げる筋肉を支配している神経に不都合があることが考えられます。どちらかのまぶただけ下垂がある場合は目の開き方の左右差で気づかれやすいですが、両方の下垂が軽度の場合は気付かれない可能性もあります。多くの場合、物を見るときの見えにくさを補うために、おでこの筋肉を使い眉毛を挙げて目を開けようとしたり、まっすぐ前を見たときに視野が制限されるため見やすくするために顎(あご)を挙げて物を見ようとします。

先天性眼瞼下垂により上まぶたが十分に開かない状態は、視力の発達に悪影響をおよぼします。生まれたばかりの赤ちゃんは物がはっきり見えているわけではなく、物を見ること、目に光を十分に取り入れることで大人の視力に近づいていきます。また、まぶたの開き方に左右差があったり、眉を挙げて物を見る状態は見た目の問題も生じてきます。

2. 先天性眼瞼下垂の治療

先天性眼瞼下垂の治療法は手術ですが、ある程度まぶたが開き、物を見ようとしている様子が見られれば視力の発達の経過を注意深く観察しながら、3歳以降に手術をすることが多いです。
手術の方法は大きく分けて二つあり、ひとつは挙筋前転術(きょきんぜんてんじゅつ)といって眼瞼挙筋(まぶたを挙げる筋肉)を縫い縮める方法です。もうひとつは眼瞼挙筋のまぶたを挙げる力が非常に弱いか、もしくはほとんどない場合に前頭筋(ぜんとうきん)つり上げ術を行います。この方法は眉毛を動かす筋肉である前頭筋とまぶたの間に自分の身体の組織を移植し、前頭筋の力を利用してまぶたを挙げる方法です。なお移植に使われる組織は大腿筋膜(だいたいきんまく)という太ももの筋肉の表面にある膜が使われることが多いです。

3. 先天性眼瞼下垂の手術に期待される効果

挙筋前転術の場合は時間の経過とともにまぶたを挙げる筋肉が緩み再び手術が必要になることがあります。また通常は下を見ようとして眼球が下に移動すると同時に上まぶたも一緒に下へ移動しますが、つり上げ術後では眉毛と上まぶたの距離が固定されているため、眼球が下へ移動しても上まぶたが連動せず、白目(強膜)が大きく露出してしまう現象が起きます。下を見るときは顔全体を下に向けるように注意すれば問題はありません。
また、大腿筋膜を使う場合は太ももの外側に小さい傷がつきますが、ほとんど目立ちませんし筋肉の働きに支障をきたすこともありません。