口唇口蓋裂(唇顎口蓋裂)
1. 口唇口蓋裂とは
この疾患は外表先天異常のひとつで、口唇(くちびる)、顎堤(はぐき)、口蓋(口の中の天井部分)に割れ目が残ったまま赤ちゃんが生まれてきます。見た目の問題に加えて、赤ちゃんのときは哺乳が困難な子がいること、中耳炎にかかりやすいこと、言葉のトレーニングを必要とする子がいること、歯科矯正治療を必要とする子が多いことなどがこの疾患の特徴です。
基本的な治療は手術でそれを縫い合わせることです。 成長に伴って生じた変化に対して追加の手術を要することもありますが、現在の形成外科の技術を用いると、手術を受けたことがほとんど分からないような結果を得ることができます。
治療にかかる費用は、歯科矯正も含め、全て健康保険の対象です。さらに、各地方自治体の乳幼児医療補助や、生まれつきの病気に適用される育成医療制度を用いることも可能です。
はぐきの割れ目の幅が広いときに、一部の施設で、手術前に、術前顎矯正といって矯正歯科で、割れ目の幅を狭くして、外側に平たく流れているお鼻もある程度整える治療を自費で行うこともあります。
2. 口唇口蓋裂の出生頻度、発生原因について
口唇口蓋裂の出生頻度は、日本では約500出生に1人程度といわれていて、最も頻度の高い生まれつきの異常の一つです。人種による違いがあることも知られていて、東洋人は最も頻度が高いと考えられています。社会には赤ちゃんのときに手術を受けた方が数多くいますが、とくに問題なく生活を送っています。きちんとした手術が行われれば、将来の心配はありません。
発生原因には不明な点が多いですが、多数の因子が関与しているとされています。 胎児の口唇は胎生7週ごろ、口蓋は胎生12週頃に、それぞれの元になる部分が癒合することで作られます。口唇口蓋裂は、胎生期のこの時期に、何らかの原因でその癒合のプロセスがうまく行われなかった結果と考えられます(図1、図2)。全くの偶然、母胎の環境、何らかの薬剤、遺伝的因子など、小さな原因が積み重なった結果、それがある一定の限界を超えたとき発生すると考えられています。ただし、現在の医学では、遺伝的影響がどの程度関係していたかを知る手段はありません。
なお、最近は母胎の超音波検査によって出生前から口唇口蓋裂の診断がつくことも増えてきました(写真)。