ブレストインプラントガイドライン管理委員会
乳房インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)の要点
日本乳房オンコプラスティックサージャリー学会(JOPBS)
日本形成外科学会
日本乳癌学会
日本美容外科学会(JSAPS)
BIA-ALCLとは、乳房再建術または乳房増大(豊胸)術で乳房インプラントを挿入された方に生じる、T細胞性非ホジキンリンパ腫の一つです。乳癌とは異なり、インプラント周囲に形成される被膜組織から発生する悪性腫瘍です。インプラントが挿入されている方のうち、約2,207~86,029人に1人に発生し、最後のインプラント挿入から診断までは平均9年(0.08~27年)で、テクスチャードタイプ(表面がザラザラ)のインプラント使用例で報告されています。2019年、日本ではじめての発生例が報告されました。
2019年7月アラガン社は日本国内で流通するマクロテクスチャードタイプのエキスパンダーおよびインプラントを自主回収、販売停止としました。代替品として、現在同社のスムーズタイプのエキスパンダーと乳房インプラントが販売されています。2020年10月にはシエントラ社の乳房インプラント(マイクロテクスチャードタイプ、スムーズタイプ)も本邦の保険医療で使用可能となりました。
- BIA-ALCLを疑うべき臨床症状
多い順に、遅発性漿液腫(約80%)、腫瘤(約40%)の他、疼痛、腫脹、非対称性、被膜拘縮、潰瘍などがあります。 - 診断の流れ
1) 画像診断:超音波検査、MRI 等で液体貯留・腫瘤の確認
2) 液体貯留に対してエコー下に穿刺して検体を精査
(ⅰ)細胞診とCD30 を含むフローサイトメトリー(外注となることが多い)
(ⅱ)可及的多く検体を採取し組織診断用のセルブロックを作成(病理部門があれば対応可能)。
(ⅰ)で異常があった場合は免疫染色でCD30 陽性とALK 陰性を示す。
3) 腫瘤や被膜に対して生検または摘出後の組織を精査病理組織検査とフローサイトメトリー。必要に応じて免疫染色でCD30 陽性とALK 陰性を示す。
4) PET/CT等でリンパ節、遠隔転移を検索し病期決定
BIA-ALCL確定・疑いは自費・保険に関わらず、必ずJOPBS学会へ報告してください。 - 治療
病変が被膜に限局する場合(stageⅠ)は、被膜の完全切除およびインプラントの抜去のみで、経過観察を行います。被膜や腫瘤が完全に切除できない場合、あるいはリンパ節などへの転移を伴う場合(stageⅡ~Ⅳ)は、集学的医療チームによる化学療法、放射線療法を行います。 - 予後
BIA-ALCLの5年生存率は91%です。StageⅠで腫瘍・被膜が完全切除された場合は治癒が期待できます。一方で、完全に切除できなかった場合やstageⅡ以上では予後は悪くなります。そのため、早期発見のための患者教育が重要となります。
2020年10月2日