形成外科で扱う疾患


広範囲熱傷

1. 疾患の解説

広範囲熱傷とは、熱傷(やけど)を受けることによって全身を流れている血液の中の血漿という成分が減少し、血圧が下がり、直ちに点滴注射で多くの水分を投与しなければならないような熱傷を言います。一般的には熱傷した広さが、その人の体の全表面積(熱傷体表面積)の15~20%以上のものです。それは成人で鼠径部(太ももの付け根)からつま先までの広さ以上の熱傷です。
熱傷患者の重症度を左右するものとしては以下の事柄が挙げられます。

(1) 熱傷の広さ

体表面積のうち、何%がやけどを負っているのか計算する必要があります。当然のことですが、熱傷の面積が広いほど重傷となります。簡便な計算方法の一つに9の法則というのがあります。頭が9%、身体の前面が9の2倍の18%、後面も同様18%、片上肢9%の両方で18%、下肢は片方で18% 両方で36%というように計算します。(図1)幼児・小児の場合は、頭の部分をより大きく評価した5の法則を用います。(図2

(2) 深度

同じ熱傷面積でも、熱傷の程度が深いほど重傷となります。
皮膚の厚さの半分程度のやけどをII度の熱傷、皮膚の厚さ全部あるいはそれ以上深くまでやけどしたものをIII度熱傷といいます。同じ熱傷面積であればIII度熱傷はII度熱傷の倍の重症度があると判定されます。

(3) 年齢

幼小児は成人よりも抵抗力が弱く、容易に血圧が下がったりしますので、熱傷面積が10%以上になると早急に点滴注射など始めなければなりません。一方、高齢者も加齢とともに死亡率は高くなります。

(4) 気道損傷

家の火事など火による熱傷の場合、熱風や煙、有毒ガスを吸い込む事によって、のどや気管、肺などに損傷を与え、息が出来なくなったり肺炎などを引き起こします。

(5) 内科の病気

内科の病気などをしている人、したことがある人は重症になる傾向があります。

(6) 治療開始までの時間

熱傷を負ってから点滴治療などが開始されるまでの時間が長くなればなる程、ひどい合併症を引き起こしたり予後も悪くなりますので、少しでも早い専門医での治療が必要となります。

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2. 治療法

(1) 全身的処置
A. 輸液管理
血圧を正常に保つためにも一刻も早い点滴治療を行なわなければなりません。必要な点滴の量はいろいろな計算方法がありますが、大変多くの量が必要です。
B. 呼吸管理
のどや気管、肺などに損傷がある場合は、一刻も早く口から気管チューブを挿入して呼吸をしやすくしなければなりません。
C. 栄養管理
広範囲熱傷の場合は高カロリーの投与が必要となります。口から食べ物がとれればそれが一番良いのですが、出来ない場合や十分量とれない場合は、鼻から細いチューブを胃に入れてそこから流動食や栄養剤を注入したり、あるいは静脈にカテーテルを留置し、そこから高カロリー液の投与を行なうなど適切な処置を行うことが大切です。
(2) 局所処置

浅いII度熱傷では、細菌が熱傷創面に付着しないように清潔を保ち、ガーゼ、軟膏あるいはさまざまな素材でできたドレッシング材を用いて保存的に治療します。

一般に2週間以内に熱傷が治れば、傷あとは目立ちにくくなりますが、3週間以上かかった場合には、ケロイド、肥厚性瘢痕のように盛り上がった傷あとになる場合が多くなります。

深いII度熱傷やIII度熱傷ではできるだけ早い時期に焼けた皮膚などを切除して、その部分に新しい皮膚を植えて熱傷創面をふさぎます。移植する皮膚には原則として自分自身の皮膚が用いられますが、広範囲の場合、一時的に他人から提供された皮膚を用いる場合もあります。このために日本スキンバンクネットワークが設立されました。

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