形成外科で扱う疾患


瘢痕・肥厚性瘢痕

1. 瘢痕

瘢痕とは、外傷、手術、やけどの後などにみられる“傷痕(きずあと)”のことです。傷痕が残るかどうかは、傷の深さ、大きさ、受傷部位、細菌感染の有無などに左右されます。例えば、日焼けや、??度までの浅いやけど、すり傷のような場合、皮膚は再生により殆ど目立たなくなります。表皮あるいは真皮表層(乳頭層)までの浅くてきれいな傷だからです。ところが深い傷では治るときに肉芽組織(幼弱瘢痕組織)が形成されますので、最初の数ヶ月間は傷痕も赤く、かゆみや痛みなどの症状があります。やがて半年から1年ほど経つと自然に成熟瘢痕となり、赤みもとれ白い平らな傷痕になります。瘢痕の幅が広い、あるいは皮膚の皺に逆行して目立つようであれば、この時期に形成外科的に瘢痕修正術を行います。傷痕を切除・縫縮して細い線にしてしまうことができます。瘢痕の場所や向きによっては、単に切除・縫縮したのでは術後にひきつれたり目立ったりするような場合があります。このような時はZ形成術やW形成術という方法で傷の向きを皺の線に沿うようジグザグにして、なるべく傷痕を目立たないようにします。

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2. 肥厚性瘢痕

肥厚性瘢痕は、傷の治りが悪い場合によく見られます。傷が塞がっても、その上の皮膚から隆起して赤く盛り上がってきます。この時期には、引きつれやかゆみ、痛みを伴います。その後、次第に赤紫色に移行し色もうすくなってきますが、赤味が消失して平坦化するもの、軽度の盛り上がりを残すものなどさまざまです。顔面や関節部の肥厚性瘢痕では、しばしば引きつれをきたし、機能障害の原因となります。よく“ケロイド”という言葉が使われていますが、表1に示すようにケロイドと肥厚性瘢痕とは全く違う疾患です。治療に際しては、時間をかけた注意深い経過観察が重要で、まずは保存的治療を行います。局所の圧迫、運動抑制などできるだけ安静を保つことが、肥厚性瘢痕の発生を抑え消褪傾向を促進します。その上で改善がみられないもの、できるだけきれいに傷痕を治したいと希望される方には手術治療を行います。しかし、跡形無く傷跡が消えてしまうと言うことではありませんので、治療にあたっては担当医とよく御相談の上、その効果や限界についてご理解頂くことが必要です。

    肥厚性瘢痕 ケロイド
成因 真皮表層までの損傷 真皮中層から広く広範囲に損傷が及んだ場合、「創傷治癒の遅延」により発生 不明、真皮の表層のわずかな損傷でも、発症原因となりうる
人種 特になし ケロイドほど人種差なし 黒人>黄色人種>白人
体質 特になし 特にないが、高度型ではケロイド体質を認めることがある いわゆるケロイド体質
好発部位 特になし 全身どこでも発生の可能性がある。特に関節部など可動部で傷痕に緊張のかかりやすいところ。また皮膚の部位的性状にもよる 胸の正中部、三角筋部、肩甲部、耳介、耳後部、恥骨上部が好発部位。但し、全身どこでも発生の可能性はある
自覚症状 軽度のかゆみ、自然消退 掻痒、疼痛、発赤、ひきつれ感 左と同じであるが、症状はより強い
他覚症状 数ヶ月間、傷痕の発赤 赤みがあり、盛り上がっている。もとの傷の範囲を越えない 赤みと盛り上がりが、周辺にしみだす
病理 膠原線維の軽度の蓄積 膠原線維が過剰に蓄積 左に同じ。肥厚性瘢痕とケロイドとを組織学的に区別するのは困難
【治療1】
早期増殖期
局所の安静、テープによる固定
目立つようであれば、形成外科的手術を行う(切除、縫合)
A. 種々の圧迫固定法
スポンジ、サポーター、シリコンゲルシートコルセットなどによる圧迫固定と安静
B. ステロイドテープ
C. トラニラスト内服(瘢痕の増殖抑制効果)
D. 軟膏療法(掻痒の抑制、保湿効果)
E. 局所注射(ステロイド;トリアムシノロン)
左に同じ、その他デルモオパン、電子線照射
【治療2】
症状固定期
  切除・縫縮、植皮、皮弁などにより修正 外科的治療は一般的に禁忌
経過 経過良好 治療成績良好。隆起病変は次第に退行性変化して、平らになってくる 治療に対し抵抗性があり、再発傾向が強
自然消退は少ない

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