形成外科で扱う疾患


頭蓋顎顔面骨延長

骨延長とは、わかりやすく説明すると、骨に切れ目を入れて、その両側の骨を毎日少しずつ移動させていくことにより、切れ目の部分に骨組織を再生させ、骨を延ばす治療法です。

例えば、先天奇形や外傷などで短くなってしまった骨を延ばす場合、従来法では、骨を切って(骨切り術)すぐに所定の長さまで移動し、生じる隙間に骨を移植していました。この移植骨は自分の骨でないと拒絶反応により生着しませんので、同じ患者さんの他の部分から骨を採取する必要がありました。しかも、この方法には移植された骨が感染をおこしたり、吸収され、長さが元に戻ってしまい易いという欠点がありました。

これに対して、1960年代後半にロシアのイリザロフという整形外科医が、骨に切れ目を入れて器械(創外固定器)を装着して毎日少しずつ引き延ばすことにより、骨を再生、延長させるという画期的な術式(骨延長術)を考案しました。この方法は当初、整形外科領域で四肢の長管骨の延長に応用されましたが、1980年代の終わりから形成外科領域でも顔面骨の延長に応用されるようになったのです。形成外科領域ではまず下顎骨の骨延長に応用され、1990年代の中頃からは上顎骨や頭蓋骨の骨延長に適応が拡大されてきており、現在では一般的な手術法となっています。そのほか、形成外科領域では手指や足趾の骨延長術も行われています。

頭蓋顎顔面の骨延長術が適応となる形成外科領域の疾患としては、各種先天奇形による骨形成異常や劣成長が一般的です。小顎症、小頭症、クルーゾン病や唇顎口蓋裂による上顎劣成長などに適応されています。

骨延長術の実際は、延長したい骨を骨切りして骨延長器を装着し、1週間後くらいから毎日0.5-1 mm程度の速度で骨切り部を拡大していきます。毎日の骨延長は無麻酔で可能です。あらかじめ計画した延長量に達すれば延長は終了しますが、その後2-3ヶ月間、延長器を装着したままで延長部にしっかりした骨が出来るまで保定をします。その後、骨延長器を除去します。骨延長期間中に疼痛などの障害はほとんどありません。また、入浴、通学などの日常生活はほぼ通常通りに行うことが可能です。

骨に装着する骨延長器には大きく分けて内固定型骨延長器と外固定型骨延長器の2種類あります。内固定型骨延長器は小さいもので大部分が皮下に埋没されますのでほとんど目立ちませんが、骨延長終了後に除去手術が必要です。外固定型骨延長器は除去のための手術は原則的に不要ですが、装置が大きいため目立つのが欠点です。

骨延長術は形成外科の治療法としては比較的新しいものですが、合併症が比較的少なく、成績が安定しているのが特長です。数ヶ月間、骨延長器を装着しなくてはなりませんが、日常生活はそれほど障害されませんし、特に頭蓋顎顔面骨では非常に良好な骨再生も得られますので、今後ますます適応が拡大されるでしょう。また、除去手術が不要となる吸収性の材料を用いるなど、今後の骨延長装置の進歩にも期待が持てます。