形成外科で扱う疾患


腋臭症

腋臭とはわきの下のにおい、「わきが」とも呼ばれています。欧米ではある程度生理現象として認識されていますが、東アジアではにおいや衣服の黄ばみなどに嫌悪感を抱く傾向があり、実際お悩みの方は潜在的に多いのではないかと思います。

皮膚にはエックリン腺とアポクリン腺の2種類の汗腺(汗を出す器官)がありますが、腋臭の原因となる後者はわきの下、外耳道、まぶたの縁、鼻、乳輪、外陰部などの毛穴に分布し、その汗に含まれる脂質・タンパク質が皮膚表面の細菌の作用で分解され特有のにおいを生むとされています。このアポクリン腺の発達には遺伝的素因、性ホルモンなどが関与するほか、腋毛の量、精神的素因(ストレスや緊張など)もにおいの発生に関係しているようです。

さて腋臭症の治療はまず生活習慣を見直すところから始まります。日常生活は不規則になっていませんか?わきの下は定期的に拭いて清潔を保っていますか?腋毛の処理や市販の制汗剤を試みて下さい。それでも効果が不十分な場合に初めて手術治療を含めて検討することになります。手術以外の治療法としてはレーザーまたは針による脱毛法、イオン導入法(イオントフォレーシス)もある程度の効果が得られています。

手術治療のよい適応になるのはにおいが強い場合です。時々患者さんはとても悩んでいるにも関わらず、においの程度がごく軽い(ない)場合があります。このような時には手術はお勧めしません。またとにかく汗の量が多くてお困りの方は「多汗症」といい治療も異なります。胸部交感神経節ブロック(または切除)法を胸部外科や麻酔科に依頼することがあります。

手術はわきの下の皮膚切開からアポクリン腺の分布している層を剪刀(せんとう、外科手術用はさみ)で皮膚の裏側から切除する方法が最もよく行われています。最近は剪刀の代わりに切除用の特殊な器械(クアドラカット剪除吸引器、超音波メス、脂肪吸引器など)を用いる方法もあります。またわきの下の皮膚ごと切り取り縫い縮める切除法、それらを組み合わせた方法などもあり、切開する傷の位置や大きさは様々です。

方法による違いはありますが、9割以上の方は大半のにおいが減少します。逆にいえば手術で完全ににおいを取り去るのは困難であり、また若干ですがにおいの後戻りが起こります。これらはアポクリン腺の除去をわきの下の全範囲で完全に行うことが難しいためです。

手術後起こりうる合併症は、傷が治るまでの期間には皮膚の下に血の固まり(血腫)や膿をもってしまう、それらの結果としての皮膚壊死などがあります。その予防のためには傷の安静が重要ですから、術後はガーゼをわきの下に大量に硬く当てる固定法をよく行います。また腕を動かし過ぎないなどの生活上の制約は必ず守って下さい。

また、手術後数カ月の間は皮膚の引きつれ(拘縮)や色素沈着などが生じます。その後、次第に改善しますが、手術による瘢痕は永久に残りますので、そのことを考慮の上、手術を行うかを検討する必要があります。

手術は基本的には局所麻酔で行うことができ、片側30分から1時間程度かかります。入院は必要としないとする方針の施設が多いようです。各々の医療機関で異なりますのでよく相談してみて下さい。