形成外科で扱う疾患


頭頸部再建

頭頸部とは、文字通り頭部と頚部(つまり首から上)の領域を表しますが、ここで主に対象となるのは口腔、咽頭、喉頭、鼻・副鼻腔や頚部食道などの粘膜で覆われた領域や、頭皮、顔面皮膚などの外表部分、そして頭蓋骨、顔面骨(上・下顎骨など)などの骨性支持組織などで、眼球、鼻、耳介、口唇などの重要な構造物・器官も含まれます。つまり、この部位は、個人の識別となる顔面形態・表情を形成しているばかりでなく、嗅覚・視覚・聴覚から嚥下・咀嚼・構音・発声といった日常生活で極めて重要な意味を持つ機能を司っているわけです。従って、この部位に生じた悪性腫瘍の外科的切除後の再建は、患者さんの術後のQOL(quality of life:生活の質)の向上にとって大変大きなウエイトを占めます。そのため古くより、この領域の再建には形成外科的な手技が多用されてきています。

この部位に生じる悪性腫瘍は、多くは扁平上皮癌ですが、他に腺癌、肉腫などがあります。再建の対象となることが多い疾患としては、舌がん、口腔底がん、中咽頭がん、下咽頭がん、喉頭がん、上顎がん、歯肉がん、耳下腺がん、皮膚がんなどが挙げられます。化学療法の進歩、放射線治療法の進展、画像診断技術の向上、および外科的手技の発達など、がんに対する集学的治療の発展により、頭頚部がんに対する治療成績も向上してきていますが、多くの症例に対して外科的切除が必要となります。形成外科医は、主にそのような外科的切除後の組織欠損の再建を行う訳ですが、機能的かつ形態(審美)的にいかに修復するかは、疾患自体の治療と同様に重要な意味を持ちます。

再建には種々の方法がありますが、この領域で特筆すべき進歩をもたらしたのは、手術用顕微鏡下の血管吻合(マイクロサ-ジャリ-)による遊離組織移植術です(図1)。本法の導入により、術後合併症の減少、罹病期間の短縮、そして良好な機能・形態の獲得など著しい治療成績の向上を見ています。対象となる疾患は多数ありますが、代表的なところでは、下咽頭・頚部食道がん切除後の再建における遊離空腸移植術、舌がんに対する舌全摘・亜全摘後の遊離腹直筋皮弁による再建などが挙げられます。切除範囲や患者さんの状態などにより若干の違いはありますが、前者の場合、術後10日前後で食事摂取が可能となり、常食に近い食事が摂れるようになります。後者の場合は、通常軟食(お粥、キザミ食など)の摂取となりますが、舌全摘後でも、やや言葉は不明瞭なものの他人との会話は充分に可能です。

なお、上記のようながん切除に伴う即時再建ばかりでなく、がん治療後の2次変形(残存変形)に対しても、形成外科的な手技は大変有用であり、患者さんの社会復帰に大きな福音となっています。