形成外科で扱う疾患


顔面神経損傷

1. 疾患の解説

「笑い」や「怒り」などわれわれが表すさまざまな表情は、すべて顔面の皮下に存在する表情筋と呼ばれる筋肉群の働きによるものです。眉毛、眼瞼、口唇など部位によって異なる表情筋が作用し、その種類は約20種類ほどあるといわれていますが、これら表情筋はすべて顔面神経という1本の神経に由来する分枝によって支配されています。したがって顔面神経が何らかの障害を受けた場合、その部位と程度により様々な「顔面神経麻痺」、たとえば眉が動かなくなる、眼瞼を閉じることができなくなる、口元を動かして「笑う」ことができなくなる、などの症状をおこすことになります。

顔面神経は脳神経の一種で、耳垂(耳たぶ)の後下方あたりから頭蓋骨の外へ出て、耳下腺の中を通り、その間に複雑に枝分かれしてから各種の表情筋に入っていきます。したがって顔面の軟部組織損傷において顔面神経が切断された場合には、たとえば耳垂の前方の切り傷で眉が動かなくなるなど、外傷部位と離れた場所の表情筋が麻痺することが起こり得ます。

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2. 治療法

顔面神経の切断が疑われる場合、受傷部を丹念に調べて切断された神経の両断端を探し出し、顕微鏡下に神経を縫合する(マイクロサージャリー)手術を行います。しかし手術後すぐに表情筋の機能が得られるわけではありません。縫合部の中枢側から再生した神経線維が縫合部を越えて末梢へ伸びていき、筋肉に到達して機能を回復するには数ヶ月かかるのが普通です。

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3. 治療により期待される結果

受傷後なるべく早期に神経縫合を行ったほうが機能回復の可能性は高いといえますが、一刻を争うわけではないので、救急処置のあと形成外科専門医を紹介受診するのが一般的です。しかし創が一旦瘢痕化して治癒した場合、再度開創して神経断端を探し出すのはかなり困難になります。場合によっては神経縫合が行えず、身体の他の部位から神経移植を行って両断端を橋渡しすることもあります。

機能回復の程度は神経切断部の部位や断端部の状態によってかなりの差があり一概に言えませんが、放置しておくと表情筋の筋肉そのものが萎縮に陥ってしまうので、受傷後かなりの日数が経ってしまった場合でも神経縫合あるいは神経移植を行う意義はあると考えられます。望ましい回復が得られない場合はその段階で種々の形成外科的治療を考慮することになります。

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