形成外科で扱う疾患


頬骨骨折

1. 疾患の解説

(1) 概念

頬骨は、頬の高まりを形成している骨で、体部、弓部と呼ばれる部分からなります(図1)。体部は前方に、弓部は側方に突出しているため、転倒などの際に外力を受け、骨折をすることがあります。上顎骨や頭蓋骨に囲まれており、それらとの境目に弱い部分があり、骨折のほとんどはここが分離する形で起こります。また、体部は眼球を保護する壁の一部にもなっているため、骨折によって眼の機能に障害をもたらすこともあります。転位(ずれ)がほとんど無い場合を除いて、骨折を放置すると、顔面に変形を残すことになります。

A. 頬骨体部骨折(図2)
多くの場合、隣り合った骨との接合部(縫合線)で骨折して、体部全体がそのままの形で転位します。通常は、体部が内方に落ち込むので、頬は突出感が無くなって平坦になります。眼球の動きが障害されたり、頬を中心とした皮膚の感覚障害を起こします(後述)。
B. 頬骨弓部単独骨折(図3)
弓部への直接外力によって起こり、体部には骨折のないものです。したがって、眼の症状や感覚障害は起こりません。骨の下を通っている側頭筋(下顎骨に付着していて口を閉じる時に働く筋肉)に食い込むと、開口障害(口が開かなくなります。)を起こします。変形は顔側面のへこみとして表れます。
(2) 症状

受傷初期には、他の骨折と共通の症状、すなわち腫れや痛みを認めます。特にまぶたの腫れが強く、眼球自体に損傷がなくても眼球表面の内出血がみられます。

眼球症状
眼球が納まっている骨で囲まれた窪みを眼窩(がんか)と呼びます。頬骨の骨折によって、眼窩が拡がり、眼球が陥没することがあります。これに伴って眼球の動きが悪くなり、複視(ものが二重に見える)が起こります(眼窩底骨折の項参照)。ただし、初期には眼窩内の出血によって、眼球が突出する場合があります。また、腫れや出血による複視は、一時的で自然に回復することがあります。
頬部感覚障害
上顎骨に眼窩下神経という感覚神経が通る出口があり、これが頬骨との接合部に近いため、体部骨折ではこの神経が損傷されることがあります。感覚障害(しびれ)は、頬部、鼻の側面、上口唇、歯肉におよびます。歯肉の感覚が低下すると、実際には異常がないのに歯が噛み合わないと訴えることがあります。
顔面変形
頬部のへこみは、腫れが引くにしたがって明らかになります。
弓部骨折の症状は前述した通りです。
(3)診断

症状に加えて、レントゲン撮影、CT検査で診断を確定します。
体部骨折では、視力・眼球運動検査など眼科的な検査も必要です。

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2. 治療法

転位が軽く、重要な機能障害のない場合には手術しないこともあります。
軽度の複視や皮膚の感覚障害があっても、自然治癒する場合があります。
逆に、転位が明らかであれば、眼球症状や神経症状が軽くても手術の適応となります。これは、機能的な障害がなくても、眼球陥没や頬部の変形が後になってから目立ってくることもあるからです。

(1) 手術法
A. 体部骨折
通常、眉毛の外側、下まぶたの皮膚の切開、口腔の粘膜(歯肉の付け根付近)切開を行い、3方向から転位した頬骨の位置を戻し、金属製のプレート、スクリューなどを用いて、周囲の骨と固定します(図4)。最近は、溶けて吸収される材料で作られたプレートを使うこともあります。眼窩の壁の骨欠損が大きければ、骨移植を行うこともあります。手術は全身麻酔が必要です。
B. 弓部骨折
弓部だけの骨折ならば、側頭部毛髪内の切開から、骨を元通りに整復することができます。プレートなどによる固定は通常必要ありません。またこの操作は、局所麻酔でも行えます。

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3. 症状の回復について

複視や感覚障害は、術後直ちに消失するわけではなく、回復には数週から数ヶ月かかるのが普通です。また、骨折が重度の場合、これらの症状が完全回復せず、後遺症として残ることもあります。

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