形成外科で扱う疾患


前頭骨骨折

1. 疾患の解説

前頭骨骨折は交通外傷、転倒、転落、殴打などを原因として生じる額の骨折です(図1)。外力が強いときには額に限局せず周囲にも損傷が及ぶことも少なくありません。このため、額の陥凹のほかに眼球の運動障害や前頭洞炎などを引き起こすこともあり、初期の診断と適切な治療が必要です。前頭骨骨折はその損傷範囲に前頭洞が含まれるか否かによって治療の難易度が大きく異なります(図2)。専門医の診察を受けることが望まれます。

Pagetop

2. 症状

最も多く見られる症状は、額・眉間・眉毛部の挫創や陥凹変形です。額の形態には個人差があるため、骨折による陥凹があっても気づかれにくく、画像検査のCTで初めて指摘されることも稀ではありません。その他の症状では、骨折部からの出血が鼻腔や口腔内に流れ込んで、鼻からの出血や痰に血が混ざることがあります。

また、外力が強く、骨折が外側の眼窩壁にまで及んだ場合には、上眼瞼や眼球の運動障害を伴い、「瞼が下がって見えにくい(眼瞼下垂)」、「物が二重に見える(複視)」などの症状が見られることもあります。

さらに頭蓋内(硬膜・脳実質)にも損傷が及べば、臭いがわからない、髄液の漏出などの合併症を伴います。晩期合併症としては、前頭洞に由来する合併症が生じることがあります。前頭骨の中心部には前頭洞という骨の空洞があり、細い管で(鼻前頭管)鼻につながっています。この洞の処置が適切に行われていませんと、受傷後数年~十数年を経過して前頭洞粘液嚢腫・前頭洞膿腫・前頭洞炎を発症し、眼球の偏位や皮膚に孔が開いて膿が排出することがあります。

Pagetop

3. 手術適応

線状の骨折線が認められる程度の症例では手術は要しません。

眉の中央から外側の範囲の骨折(図3)では、

  1. 外見上の陥没が見られる場合
  2. 骨片が眼窩内にずれたもの
  3. 脳を圧迫する場合

に手術が必要となります。

この部の骨折では、奥の視神経管が骨折して視力が低下していることもあり、なるべく早く骨折による圧迫から視神経を開放する手術が必要になることもあります。

眉間部の骨折では、前頭洞と前頭蓋底の骨折の処置が特に重要です。前頭洞の薄い前壁だけの骨折では、骨折を戻して眉間の陥没を治すだけで十分です。しかし、洞の後壁まで骨折や鼻前頭管が潰れるような骨折では、前頭洞の適切な処置が必要です(図4)。
また、前頭蓋底の正中部の骨折では、臭いの感覚を元に戻すことはできませんが、髄液の漏出を伴っている場合にはこれをしっかりと治すことが必要です。

Pagetop

4. 治療法

限局した骨折では、フロントガラスによる損傷などで傷を伴っていることが多いので、これを利用した皮膚切開から骨折片を整復固定します。骨折片が粉砕している症例では、骨移植で置き換えることもあります。また、額の陥凹変形のみが手術適応のときには、人工骨での修復も可能です。損傷範囲が広範囲で複雑な再建が予想される場合には頭皮内の冠状切開から手術治療が行われます。

Pagetop

5. 治療によって期待される結果

額の陥凹変形の整容的改善、骨片のズレに起因する眼球の運動障害・複視・陥凹が改善します。髄液瘻を治療することで、鼻副鼻腔からの上行性感染による髄膜炎の発症を防ぐことができます。また、晩期続発症である前頭洞排泄孔閉塞に伴う前頭洞炎や頭蓋内への感染の波及などの重大な合併症を未然に防ぐことができます。

Pagetop