形成外科で扱う疾患


側頸嚢胞

1. 疾患の解説(図1

(1)発生

胎生2~3週ごろに、顔面下半から頚部の様々な器官の基となる5対の鰓弓と4対の鰓裂、鰓溝が生じますが、側頸嚢胞(瘻)は、この鰓裂が閉鎖せずに遺残することにより発生する先天異常と考えられています。第2鰓裂に由来するものが最も頻度が高く、皮膚や咽頭壁に瘻孔を有するものを側頸瘻といい、瘻孔の無いものを側頸嚢腫といいます。

(2)臨床症状

発生頻度は10万人に1人といわれ、多くは片側性で男女差はありません。嚢腫は、胸鎖乳突筋前縁上1/3の高さの顎下三角部に主として存在し、炎症を伴わなければ無痛性の柔らかい腫瘤で、内部に貯留液を有し比較的境界は明瞭です。感染を起こすと有痛性となり、皮膚の発赤、熱感を伴い急激に増大します。外瘻孔は、通常胸鎖乳突筋前縁の下1/3の高さの頚部皮膚に開口し、少量の粘液を分泌します。内瘻孔は、口蓋扁桃内またはその周囲の咽頭壁に開口します。外瘻孔が存在する場合は、生下時より容易に診断されますが、瘻孔の無い嚢腫の場合、徐々に液体が貯留し腫瘤を形成するため、20歳~40歳代に気づかれることが多いようです。また、内瘻孔が存在する場合は、上気道感染に伴い開口部が閉塞し、貯留液が増量して腫瘤を形成し初めて気づくことも多いようです。

(3)鑑別診断

リンパ節炎(特に結核性)、リンパ管腫、血管腫、皮様嚢腫、脂肪腫、嚢胞形成性唾液腺腫瘍などの良性疾患が主として鑑別疾患としてあげらますが、時に嚢腫を伴う悪性腫瘍も鑑別疾患として注意を要します。CTやMRIは鑑別診断に有用です。

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2. 治療法

(1)手術療法

手術による嚢腫、瘻孔の完全摘出が最も確実な治療法であり、通常は嚢腫、瘻孔壁がしっかりとしてくる4~5歳以降に行いますが、それ以降は特に決まった手術時期はありません。手術は全身麻酔下に行い、周囲の血管、神経からの剥離に注意さえすれば嚢腫、瘻孔の摘出は容易で、合併症の危険性はまずありません。しかし、感染を繰り返すと嚢腫が周囲と癒着し摘出が困難となります。したがって、嚢胞がはっきりしてきたら早期に摘出するのが望ましいと考えられます。感染を有する場合は、抗生物質の投与による炎症の消退を待ってから手術を行います。

(2)保存的療法

エタノールを嚢腫内に注入し、硬化させる治療法で、腎、肝嚢胞の治療に以前より用いられている方法ですが、側頸嚢胞の治療ではまだ一般的ではありません。

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3. 治療により期待される結果(予後)

確実に嚢腫、瘻孔が摘出されれば、再発は起こりません。炎症さえ生じなければ治療せずに放置してもかまいませんが、ごく稀に癌化するとの報告(鰓性癌)もあります

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