形成外科で扱う疾患


鼻咽腔閉鎖機能不全

1. 鼻咽腔閉鎖機能不全とは

鼻咽腔閉鎖機能不全とは、話をするとき口の中に空気を保つことができず、鼻に漏れる状態を言います。この状態では、話し言葉が聞きづらく、はっきりとは聞きとりにくい発声になります。一般に口蓋裂の初回手術後にみられますが、口蓋裂術後の全例ではなく、その10~25%程度にみられます。たとえ、鼻咽腔閉鎖機能不全があっても、医師と言語聴覚士による的確な診断と言語評価に基づき、言語療法、装具装用、手術などを行えば、鼻咽腔閉鎖機能の改善が期待できます。

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2. 口蓋裂との関わり

口蓋裂手術では、口と鼻の間を遮断するだけでなく、成長後の構音がうまくいくように、また、顎の発育をより障害しないように工夫された種々の手術が行われてきています。軟口蓋と咽頭でつくるのどの奥の空間を鼻咽腔と呼びますが、話し言葉の一部では、この鼻咽腔がしっかりと軟口蓋の挙上と鼻咽腔全体により閉鎖される必要があります。口蓋裂の術後、軟口蓋が短いあるいは軟口蓋が十分動かないといった理由でこの鼻咽腔を閉じることができないことがあり、この状態を鼻咽腔閉鎖機能不全と呼びます。その状態では、鼻咽腔が完全に閉じるべき話し言葉が、開鼻声という鼻に漏れる発声になります。代表的には、「パ」行のことばは全く鼻に空気が漏れないのですが、鼻咽腔閉鎖機能不全では鼻漏れを生じ、典型的な開鼻声になります。この開鼻音は聞き取りにくいだけでなく、その他の言葉にもひずみを生じる原因にもなります。代表的には鼻咽腔閉鎖機能不全に起因して、口蓋裂に特徴的とされる声門破裂音などの異常構音を伴いさらに聞き取りにくくなることもあります。

鼻咽腔閉鎖機能不全の原因として考えられるのは、もともとの軟口蓋の組織量の少なさ、手術による瘢痕、軟口蓋を挙上する筋肉(口蓋帆挙筋)の動きの悪さ、その筋肉を動かす神経がうまく働かないことなどが挙げられます。

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3. 粘膜下口蓋裂との関わり

これは、口蓋裂の一つの型ですが、明らかな裂は見られず、軟口蓋の正中が粘膜だけで薄くなっています。その他、口蓋垂が二つに分かれていること、口蓋骨の中央の後端に骨の欠損を認めることも所見です。この診断は遅くなることが多く、治療を受けないまま就学前や学童期ごろになって話し言葉の異常で紹介されることが多くあります。軟口蓋の働きが悪く鼻咽腔閉鎖機能不全の症状を持つ場合があります。鼻咽腔閉鎖機能不全として、口蓋裂のときとおおむね同じ検査、診断をして治療法を決めます。

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4. 先天性鼻咽腔閉鎖機能不全症

口蓋に裂がなく、見かけは正常な口蓋ですが、話すとき軟口蓋が挙上して鼻咽腔が閉鎖できない状態を言います。軟口蓋自体の運動性が悪い場合や、相対的に咽頭の奥行きが深かったり、軟口蓋が短い場合も同様の症状となります。口蓋の見かけは正常ですので、生まれたときには診断できず、就学前や学童期ごろになって話し言葉がおかしいと医療機関に紹介されることが多くあります。これを先天性鼻咽腔閉鎖機能不全症と呼び、口蓋裂のときとおおむね同じ検査、診断を行い治療を進めます。

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5. 鼻咽腔閉鎖機能不全の診断

口蓋裂手術後の話し言葉のはたらきを調べたり、治療を選択したり、治療の効果をみるためにもこれらの口腔内視診、鼻咽腔閉鎖機能不全の検査と診断が重要です。

話し言葉のはたらきを診るために、聴覚的判定、鼻息鏡検査、空気力学的検査、鼻咽腔ファイバー検査、構音時頭部X線規格撮影、鼻咽腔X線造影検査などを行い診断します。

聴覚的判定として、聞き取りで開鼻声を診断します。鼻息鏡検査では、鼻咽腔が閉鎖すべき話し言葉での鼻息鏡での漏れで鼻咽腔閉鎖機能を判定します。空気力学的検査は、口腔内圧と鼻漏れを器械で計測して漏れの度合いを測る検査です。鼻咽腔ファイバー検査は、鼻孔からファイバーを入れ、鼻腔側から直接鼻咽腔の動きを観察する方法です。構音時頭部X線規格撮影は、頭部を両側の耳の穴で固定し安静時と構音時に鼻咽腔の軟口蓋の長さ、咽頭の深さ、軟口蓋の運動性を計測や判定を行い診断や手術適応を判定する方法です。鼻咽腔X線造影検査は、造影剤を鼻咽腔へ入れて鼻咽腔の閉鎖程度を観察する方法です。

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6. 鼻咽腔閉鎖機能不全の治療

治療は、言語療法、装具装用と手術が挙げられます。

言語療法は、ことばの訓練で鼻漏れのことばである開鼻声を含むその他の異常構音を訓練で改善する治療法です。言語聴覚士の指導で時間をかけて軟口蓋の動きを良くする訓練を進めますが、適時に医師と言語聴覚士による診断や検査により訓練の効果を判断しながら治療を進めます。

言語療法を行なう場合は、構音の補助装具として瘻孔閉鎖のための閉鎖床(Obturator)、軟口蓋挙上装置(PLP)やバルブ型スピーチエイド(valve-type speech aid)など適切な装具を使って軟口蓋の運動性を向上させる言語訓練を行うことでより効果を挙げることが出来ます。

これらの装具は一定期間の治療法とされていますが、なお話し言葉に問題がある場合は、手術で治療します。鼻咽腔閉鎖機能不全が高度の場合は、当初の診断を行って手術療法を行う場合もあります。手術法は、咽頭弁作成術や再プッシュバック法などがあり、鼻漏れを生じる鼻咽腔閉鎖機能不全の治療ができます。これらの手術を行うときも、前述の諸検査を行い、効果の良い手術を選択します。術後も、新たな状態で良い話し言葉が修得されるように言語聴覚士による言語治療が重要です。

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