形成外科で扱う疾患


口蓋裂

1. 疾患の解説

口蓋裂とは生まれつき上あご(口の中の天井)が裂けている状態をいいます。この疾患は口唇裂と密接な関係があり、口唇裂、口蓋裂の患者さんの半分は両方を合併して生まれてきます。残りの半分は、口唇裂だけ、口蓋裂だけの患者さんがそれぞれ半分ずつで、全体の4分の1ずつ生まれてきます。日本では約 400~500人に一人の割合で生まれてくると言われています。

妊娠約8週目までに口唇が、12週目までに口蓋ができあがりますが、その間に何らかの異常が生じると口唇裂や口蓋裂が発生します。その他、遺伝によって生じることもあります。口蓋裂が生じると鼻と口(鼻腔と口腔)を分けるしきりがないため、食べ物を飲み込みにくかったり、口から食べたものが鼻から出たり、またおしゃべりしたことばが鼻からもれたりする問題が生じます。その他に、口蓋の奥の「いわゆる、のどちんこ(口蓋垂)」に近い方の軟口蓋と呼ばれる部分にある筋肉の走行に異常があるため、軟口蓋の動きが悪いという問題も生じます。これらを総合して鼻咽喉閉鎖不全と呼びます。さらに喉の奥に開口している耳からの管(耳管)の働きにも関係があり、鼓膜の奥に水が溜まる浸出性中耳炎をおこしやすくなりますので、これらに対し総合的な治療が必要とされます。

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2. 治療法

口蓋裂にはいくつかの種類がありますが、大きく分けると裂け目が歯の後の硬口蓋(骨の部分)までおよぶものと軟口蓋と呼ばれる奥の方だけ裂けているものとに分けられます。前者を硬軟口蓋裂、後者を軟口蓋裂と呼んでいます(図1)。手術は裂け目を単に閉鎖するだけでなく、口蓋全体を後の方へずらすようにして口蓋垂の位置を奥へ移動します。これによって口蓋垂の部分が咽頭に接することができ鼻からの空気のもれを防ぐことができるわけです。

硬軟口蓋裂の手術時期は多くの施設では1才~1才半頃に、前述したような口蓋を後ろの方に移動するプッシュバック法(図2)という方法で手術をします。その理由は1才頃になると言葉を話し出しますので、その前に手術を行った方が正常な言語が得られやすいからです。あまり早いと呼吸管理や出血の点で問題が生じることもあり、逆に2才以後になると言語の問題が生じてきますのでこの時期に行います。軟口蓋裂だけの場合には軟口蓋部の筋肉の走行を改善するようにして、Z形に裂け目を閉鎖する方法(ファーロー法)(図3)を用いる施設も多いのでこの点もよく説明を聞いてから手術を受けて下さい。なお、ファーロー法から発展させた手術法を考案して硬軟口蓋裂、唇顎口蓋裂に行っている施設もあります。

また、上あごの発育を考えるとできるだけ手術は遅い方がよいと考える医師もあり、その場合には二期法といわれる方法を用います。 これは1才までにまず軟口蓋だけを閉鎖し、その後5~8才になるまで前方の硬口蓋の方は閉鎖せずに口蓋床と呼ばれる装具をあてて鼻からものがもれるのを防ぐ方法です。

一期的に行う手術でも上あごの正常な発育が得られるものも多いため、手術法については十分に医師と相談してから行うようにして下さい。

8才以降に顎裂部に骨移植を行うのも最近の傾向です。

中耳炎の問題については耳鼻科と相談して必要に応じて治療を行います。

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3. 治療により期待される結果

手術が順調にいけば1回の手術によってよい言語が得られ、鼻から食べ物がもれることもなくなりますが、裂け目が広く口蓋の部分の組織量が極端に少ない場合には口蓋に穴(瘻孔)を生じたり、言語の方で問題が生じたりすることがあります。この場合には将来再手術が必要となりますので、そちらの項目を見て下さい。また口唇裂と合併している場合には歯ぐきの部分は将来の上あごの発育を考えて閉鎖しないことが多く、この場合しばらく鼻から飲み物がもれることもありますが、しばらくするともれもなくなります。これは将来必要があれば顎裂部骨移植時に同時に閉鎖することになります。

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4. チームアプローチの重要性

唇裂、口蓋裂の治療は歯槽骨と歯牙の矯正治療・顔面骨の成長・合併する耳鼻疾患への対応・言語の問題・合併奇形の有無の検索・社会生活への適応など多くの複雑な問題の解決が必要なため、形成外科だけでなく関連科の話し合いと協力によるチームアプローチが必要とされます。

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