形成外科で扱う疾患


体内異物

1. 概念

美容外科では、身体とくに乳房の形を整えたり、顔面の凹みやしわを盛り上げたりするために、異物を体内に入れます。しかし、異物の種類によっては体に馴染まず腫瘤を形成したり、皮膚が炎症を起こして潰瘍化することがあるため注意を要します。

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2. 種類

体内異物には、固形、ジェル、液体、ジェルや液体を固形のバッグに封入したものがあります。また、ジェルや液体のものにはいずれ吸収されるものと、完全には吸収されないものがあります。

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3. 用途

1. 顔面のしわや凹みの修正

吸収性の異物にはコラーゲンとヒアルロン酸があります。これらは注入後半年から1年で大部分が吸収されて元に戻ります。非吸収性の異物にはポリアクリラマイドという物質や、吸収性と非収性物質の混合物があります。これらは、異物自身のボリューム、あるいは異物反応により生じる肉芽が半永久的に残ることを期待して注入されるものですが、合併症も少なくありません。

2. 隆鼻術

シリコンを入れる方法が比較的安全ですが、炎症や感染が起こると、異物が皮膚から露出することがあります。なお現在、固形の異物にはテフロンなども使用されています。非吸収性のジェル状物質の注入は、肉芽腫となった場合摘出が困難になるので勧められません。またヒアルロン酸などの吸収性の異物注入は一時的な隆鼻です。なお、異物を使わず自分の肋骨や耳の軟骨を使う方法もあります。

3. 豊胸術
1)注入法の時代
戦後の日本でパラフィンやワセリンなどの炭化水素系異物、シリコンオイルやシリコンジェルなどのシリコン系異物の注入が行われました。しかしその結果ガンと区別できない腫瘤や異物が全身に転移することがあり、とくに異物が引き金となって免疫に異常をきたすことがありうる(ヒト・アジュバント病)とされ、社会問題になりました。
2)シリコンバッグの時代
1970年以降はシリコンバッグという、シリコンジェルをシリコンゴムなどの袋に封入したものを、乳腺の下か大胸筋の下に入れる方法が行われました。しかしシリコンバックの周囲に硬い膜(カプセル)が出来たり、バッグが破れたり、内容が漏れたりして、注入と同じような障害が残る場合が出現しました。1990年代に入って、アメリカのFDA(日本の厚生労働省のような機関)がシリコンバッグを禁止し、日本も追随しました。
3)生理食塩水バッグの登場
生理食塩水をシリコンゴムなどのバッグに封入したもので、破れても安全というふれこみで登場しました。しかし、感触が今ひとつで、リップリング(バッグが折れて外からわかる)を生じることもあります。
4)ハイドロジェルバッグの登場
欧州などではシリコンバッグは禁止されず、またポリサッカライドというハイドロジェルをシリコンバッグで封入したハイドロジェルバッグも、乳癌の発見に有利との触れ込みで市販されました。ただしバッグが破壊して内容物がもれた場合の安全性の保障はありません。
5)コヒーシブシリコンバッグの登場
21世紀に入ると、破れても流動しないコヒーシブシリコンバッグが製造され、乳房再建と22歳以上の女性の豊胸のための材料としてFDAの認可が下りました。従来のバッグでは最も性能のよいものと考えられますが、完全に安全であるという保証はまだありません。
6)注入法の復活と問題点
最近ヒアルロン酸やポリアクリラマイドを乳房に注射する豊胸術が出現しています。また、自家脂肪を採取して注入する方法を行っている医療機関もあります。これらの方法は皮膚の切開を必要とせず、注射だけで目的を達せるように思われますが、顔面に用いるような少量の使用に適応があり、豊胸術など大量の注入では、注入脂肪の壊死など問題を生じることがあります。壊死した脂肪はパラフィンなどの炭化水素系異物と同じような物質になり、癌と判別が難しい腫瘤となったり石灰沈着をきたすことがあります。
4. その他の部位

女性では額や顎、耳朶、臀部、男性では陰茎などに異物を入れることがあります。男性の勃起障害の治療にシリコンを入れることがありますが、これは疾患であり、泌尿器科の専門医の診察が必要です。いずれの場所も注入による方法は避けた方が無難です。

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4. 免疫異常(ヒトアジュバント病)

理論的には埋入された異物が媒介のようになって膠原病のような病態が起こりうると説明されています。しかし海外での疫学的な調査では、そのような病気の存在は否定されました。しかし、日本のようにかつて多くの注入がおこなわれた国においては、バッグが主体の欧米の調査の結果では説得力がないのも事実です。心配しすぎるのも問題ですが、生命に関係のない美容手術でこそ、このような疾患の存在を念頭におくことは重要です。

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5. 異物とガンの関係

異物が原因でガンが発生するという因果関係は証明されていません。しかし、異物が原因で腫瘤ができれば、早期がんの発見が遅れることは考えられます。

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6. 治療

美容目的で体内に入れた異物は炎症を起こしたり、皮膚に障害を起こしたり、腫瘤を作ったりしない限り摘出する必要はありません。しかし、異物を入れたことを後悔したり、痛みや痺れなどの症状を認める場合、あるいはガンの心配や免疫系の異常値や膠原病の症状が出た場合は摘出した方が良いです。破れていないバッグや固形の異物の摘出は簡単ですが、流動性の異物が体内に腫瘤を作った場合には、摘出手術は必ずしも容易ではありません。

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