形成外科で扱う疾患


豊胸術

1. 解説と現状

乳房を大きくする豊胸術は、1990年代初頭に米国を中心としてシリコンバッグが規制されたため、生理食塩水バッグを用いる方法が流行して現在に至っています。最近は、それ以外にハイドロジェルバッグやコヒーシブシリコンバッグといった新しい充填用のバッグが登場して、再び盛んになろうとしていますが、それらの新しい素材の安全性もいまだ確立したわけではありません。我が国では医師の裁量のもとであれば、いかなる材料を生体内に入れることも許されますが、厚生労働省がその安全性を保証したわけではありません。従って、患者さんはご自身の体を守るためには、使用する材料の性質と、生じる可能性のある後遺症およびその場合の対処法について十分に施術医師から聞いて納得される必要があります。とくに医師が個人輸入して手術に使用する材料は材質の分析ができないため注意が必要です。

また、ハイドロジェル、ヒアルロン酸、中国製のアメージングジェルという商品を乳房に大量注入することは我が国ではいまだ学会で認知されていませんし、かつてのシリコンやワセリンの注入による多くの後遺症の発生に対する反省からも、現在のところは安易に受けない方がよい豊胸術といえます。

脂肪注入による豊胸術は脂肪の量や注入の方法によってはよい結果がでる場合もあるとのことですが、科学的に考えると、血管を付けていない脂肪は例え自分のものでもすべてが生着するわけはありません。生着しなかった部分は融解して被膜に囲まれ乳癌と区別し難い腫瘍状のものになったり、運が悪いと感染して悲惨な結果になることもないとは言えません。従って、施術医の十分な術前説明を受けてから手術を受けて下さい。

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2. 一般的な術式

全身麻酔下あるいは硬膜外麻酔下に、バッグを腋窩の皮膚切開から大胸筋下を剥離したポケットを作成して挿入します。乳輪内、乳輔下縁、または乳房下縁を切開して挿入する方法もあります。手術後は数日の圧迫固定を要します。

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3. 治療により期待される結果

いかなるバッグも飽くまでも異物ですから、体に合わない場合もあります。違和感や疼痛など心配な後遺症があれば、直ちに施術医に相談して下さい。また、何年もすればバッグの劣化や破裂が起こることもありますので、定期的に診察をうけることを勧めます。

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4. 既に入れられた異物を摘出する場合

血清学的検査、画像診断によって乳癌の合併の疑われる場合は局所麻酔による異物肉芽腫の摘出、病理組織学的検査をまず行います。また、癌発生など後遺症に対して神経質になっている場合や腫瘤の除去を熱望される場合は摘出術の適応となります。さらに、摘出によって生じ得る変形や皮膚欠損に対して何らかの再建を希望する場合、どの方法が最も適しているかを十分に説明して選択してもらいます。

手術法の選択は、乳房異物の浸潤が広範囲かつ皮膚浸潤のある症例では乳房切除術に準じる場合もあります。通常は異物及び異物肉芽腫の摘出を行うが、手術侵襲が大きくなるようであればあまり完全摘出にこだわりすぎない方が無難です。また、異物摘出後に再建を希望する場合、自己の血管付き脂肪組織やより安全なバッグを用いた再建方法がありますので、医師に相談して下さい。

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