疾患紹介~こんな病気を治します!


ティッシュー・エキスパンダー、マイクロサージャリー

ティッシュー・エキスパンダー

1.ティッシュー・エキスパンダーとは

ティッシュー・エキスパンダー法(tissue expander、組織伸展法)は、広範囲な皮膚、軟部組織欠損の修復法の一つです。シリコン製の風船を皮膚の下に埋入し、そこに生理的食塩水を少しずつ注入することにより風船を大きくし、その上の皮膚を伸展させ、その皮膚を皮膚欠損部の修復に利用する方法です。妊婦さんのお腹の皮膚が伸展するのと同じ原理です。

ティッシュー・エキスパンダーは、本体であるシリコン製の風船状のバッグ、生理食塩水注入用ポートとこれらを接続するコネクションチューブ、バルブより構成されています。バッグには球形、直方体、クロワッサン型など様々な形態、容量のものがあり、これらを使用する部位、大きさによって選択します。

2.使用される疾患、部位

使用される疾患、部位は多岐にわたりますが、大別すると以下のようになります。

  1. 欠損部が大きく、周辺の余剰組織により被覆不可能な場合(例:広範囲なあざ、母斑、傷跡)
  2. 代わりのない限定された特殊な組織を必要とする場合(例:はげ、外傷や熱傷による脱毛部分に対する有毛部皮膚、口唇などの粘膜、顔面の広範囲な傷や皮膚欠損)
  3. 立体的な再建を要する場合(例:小耳症、乳房再建)
  4. 広い範囲の植皮、皮弁を要する場合(例:広範囲火傷、外傷)
  5. 難治な肥厚性瘢痕(例:熱傷や外傷後の一般にケロイドと総称される赤紅色の醜痕)
3.方法

ティッシュー・エキスパンダーの図
ティッシュー・
エキスパンダーの図

最低2回の手術とその間の生理的食塩水の注入を必要とします。

(1)第1回手術
まず空っぽの風船状バッグを、切除・被覆したいあざや母斑、傷跡に隣接した健康な皮膚の下に埋入します。埋入する際の傷は、いずれ切除するあざの中か、その付近におくようにします。生理的食塩水注入用ポートを少し離れた皮下に置きます。小児の場合は、これを皮膚の外に出すこともあります。バックとポートをチューブとバルブで接続します。
(2)生理的食塩水注入
エキスパンダーを埋入した傷が落ちついた後、ポートより生理的食塩水を注入します。注入間隔や量は、伸展させている皮膚の張り(緊張度)、色、患者さんの痛みを目安として決めます。患者さんの痛みは、伸展による皮膚への負担の良い目安となります。容量にもよりますが、最終的には外見的にもわかるほど皮膚が膨らみます。
(3)第2回手術
あざを切除した後の欠損を、充分に被覆するだけの皮膚伸展が得られたら、これらを切除、同時にエキスパンダーも除去して伸展した皮膚で欠損部の再建をします。皮膚は症例に応じて前進させたり、回転させたりするなど、様々な方法で利用します。
4.合併症

エキスパンダーが入っていても、自覚は少なく、日常生活だけでなく運動なども普通に行うことができます。

しかし一般に、人工物が入っている場合は感染しないよう注意を払う必要があります。痛みや局所の発赤・熱感などがみられたら、すぐに対処しなくてはいけません。感染がすすんで膿がでるようになったら、エキスパンダーを抜去しなくてはいけないこともあります。

Pagetop

マイクロサージャリー

1.マイクロサージャリーとは

マイクロサージャリーとは、その名の通りマイクロ(微小)+サージャリー(外科)、微小外科のことで、通常の手術とは異なり、顕微鏡やルーペを覗きながら非常に微細な器具を用いて行う手術のことです。顕微鏡下での剥離、神経縫合、血管吻合などに大きく分類されますが、形成外科領域では外傷により切断された神経、血管自体をつなぎ合わせる手術や、切断指肢の再接着、遊離皮弁の際の血管吻合を用いた再建手術を行います。

世界ではじめてマイクロサージャリーが臨床の場で成功したのは切断された指の再接着術で、日本人の医師によるものでした。日本人は手先が器用であるため、マイクロサージャリーによる組織移植の分野では世界に先駆けて数多くの功績を挙げています。

2.治療法

現在、マイクロサージャリーの技術は、悪性腫瘍切除後欠損や外傷による組織欠損に対して遊離皮弁を用いて再建を行う際、骨・筋肉・皮膚・神経・腸管など様々な組織に血管を付けて移植する際などによく用いられます。顔面神経麻痺のため、片側の顔面が全く動かなくなった場合、神経血管付きの筋肉を移植して顔面の動きの対称性を獲得する手術や、生まれつきあるいは事故で手指を失った場合、機能・整容面を考慮し、他の手指や足の趾を移植することも、この技術を用いることで可能になります。悪性腫瘍(乳癌、子宮癌、前立腺癌、悪性黒色腫)の治療として行われる腋窩部(わき)や鼡径部(また)のリンパ節の切除や放射線治療の後に四肢にリンパ浮腫(むくみ)を生じた場合、リンパ管と静脈をつないでリンパ液を静脈に流すことで、浮腫の改善を行う治療もあります。

これらいずれの再建術も、顕微鏡下に1mmから数mm程度の動脈、静脈、リンパ管を、あるいは神経どうしを縫合できることが、必須の条件となります。現在では、手術器具、技術の進歩によってさらに微細な1mm以下の血管、神経を吻合するスーパーマイクロサージャリーも可能になっています。

このようなマイクロサージャリーの技術を習得するためには、日々の修練とそれができる施設が必要です。

3.期待される効果

マイクロサージャリーの技術を応用することで、自己の体の組織を制限なく移動可能となり、これまで不可能と考えられていた疾患に新たな手術法を行うことが可能になりました。治療対象は外傷、熱傷、悪性腫瘍切除、先天異常など様々で、現在も広がり続けています。また、移植可能な組織も体中のありとあらゆる組織に及んでいます。今後はこれまでは移植不可能だった顔面などの組織の移植や再生医療との融合など、マイクロサージャリーには、無限の可能性が秘められています。

Pagetop