疾患紹介~こんな病気を治します!


顎裂とは

顎裂とは

口唇裂や口唇口蓋裂の患者様には顎裂(歯槽堤の裂)も合併している場合がほとんどです。歯槽部の骨がないために口唇裂の手術が美しく行われても、歯肉に切れ目が残りこれが目立ったり、裂の両隣の歯がまっすぐに生えないなどの問題が生じます。(写真22

Pagetop

顎裂部の再建手術の目的

口唇の手術や口蓋の手術にはもともと骨格の再建は必要ありません。口蓋裂には骨の欠損を伴いますが、これを再建しなくても特に困ることはありません。しかし顎裂の手術だけは歯が生える場所であるために骨の再建が必ず必要です。

骨が作られる手術を行うことで歯肉の切れ目が無くなり、きれいな歯並びが得られます。 歯槽堤の骨がないために萌出する場所の無かった犬歯が、再建された歯槽骨の中にきちんと萌出できるようになります。また、先天欠損している側切歯(二番目の前歯)に対しては、中切歯(中央の前歯)の隣に犬歯を誘導し、並べることで空隙を埋めます。犬歯の先端を削って短くすれば前歯の形態になります。(写真23)欠損している側切歯の代わりに人工歯根を打ち込む治療もありますが、非常にまれには矯正治療で抜歯される歯を歯槽骨の中に移植して植えたりすることもあるようです。

顎裂部に骨がないことはその部分の鼻の形にも影響しています。骨の再建をすると鼻孔や鼻翼の基底部が前方に押し出され、左右の差の無いよい形態になります。

Pagetop

手術時期と手術法

1.生後6ヶ月での一次手術
口唇裂手術と同時、あるいは口唇口蓋同時手術と同時に顎裂に特殊な粘骨膜弁による閉鎖手術を行います。(写真24)これにより骨移植を行わなくても歯槽堤からの骨新生により顎裂部に骨が再建されます。(写真25) 乳児期に行う初回手術の際に顎裂部の再建を同時に完了してしまえば、従来行われてきた学童期での骨移植手術を受ける必要が無いだけでなく、自分の腰から移植のために骨を採取する必要もないため、患児にとって大いなる福音となります。
国内の一部の施設でこの手術を行っています。 問題点は、得られる新生骨の量が十分でなく、臨床的要求を満たすぎりぎり程度の量であることです。 現在のところ、この手術を受けた患者さんの半数程度で、骨架橋が確認され、将来の骨移植が不要であることを期待されているようです。 また、将来の顎発育がこの手術により障害されるのではないか、上顎発育不良による反対咬合が生じるのではないかという心配があるようです。これについては最近の新しい低侵襲な手術による影響がどの程度であるのか、結果が注目されています。
2.7歳から9歳頃の自己腸骨移植術(二次骨移植術)
患者さんの腰の骨を移植用に採取し利用します。(写真26) 犬歯の萌出時期に合わせて7歳から9歳頃の手術が最適であると考えられています。歯槽骨の欠損部に腰の骨から採取した骨髄の顆粒を移植し歯肉の粘骨膜でしっかりとカバーして縫合閉鎖します。 この方法は最も信頼できる確立した手術なので、多くの施設ではこの方法を主として用いています。(写真27写真28)腰からの骨採取は傷跡を残す欠点はありますが、運動機能に影響するような問題は全く残らず、腰の骨の変形もまずありません。(写真29
最近は中切歯萌出前の5歳から6歳頃の早い時期に手術を行う施設も出てきました。 この方法は犬歯の歯並びだけでなく中切歯の歯並びも自然に良くすることができること、小学校入学前に手術が終わることなどが利点です。 一方、この年齢では腰の骨格がまだ小さいため、移植骨があまり取れないことなどが問題点と云われています。
3.人工骨や骨髄液を用いた人工骨移植による方法
最近では、再生医学の知識を生かして自己腸骨骨髄液を吸引採取し、これを吸収性の人工骨材料などと混合して、顎裂部の移植床に注入するさまざまな方法が研究されています。(写真303132
この方法だと患者さんの腰から移植のための骨を採取する必要がありません。いくつかの施設では大学の倫理委員会の了承を得た上でこの手術を行たようですが、まだ、実験的治療でどの患者さんにも勧められるという方法ではありません。また健康保険の範囲からはずれてしまいます。

Pagetop